今から二年前、樹齢千年の大楠が歴史の長さを物語る人口一万人余りの三加茂町に「列島中心論」を掲げてやって来たのは、隣町の高校教諭だった大塩邦光(くにひこ)氏。大塩氏は雷の研究の過程で、緯度と経度の視点から実におもしろい位置関係を発見した。その位置関係とは、日本列島は北東から南西へ細長く延びている関係上、緯度と経度の、下二けたの数字が同じである地点が全国に九カ所も存在するということである。大塩氏はこれらの地点を「緯度と経度の特異点」と呼んだが、その中心が北緯三四度と東経一三四度の「三四」が交差するここ三加茂町だ、というのである。
日本の「へそ」「中心」を標ぼうする地は全国に数多くある。とくに兵庫県西脇市は有名である。全国的にアピール度の乏しい三加茂町に突然降ってわいた中心論。これが「夢づくり」の始まりであった。 標高千メートルの秀峰風呂塔(ふろとう)山の山頂から北へ下った六地蔵峠の稜線部に広がる水の丸地区。ここが中心点のある地であり、夢づくりの舞台となる地域である。水の丸の農地にはイチゴやダイコンの高冷地野菜が作られ、産地化にも成功し、地区は活気に満ちている。 さらには観光要素となり得る施設も点在している。三百六十度パノラマを楽しめ、パラグライダーの発着場としてにぎわっている「水の丸ふれあい公園」、ここから南東へ約三キロの林間地には「風呂塔キャンプ場」、北へ稜線を一キロほど下ると平家の落人伝説の残される「六地蔵」。素朴な自然と歴史が香り、人びとの心を和ませる環境の整った水の丸地区は、わが町の観光推進の拠点となり得るエリアである。 平成十一年、町はこのエリアを生かした観光活性化構想「水の丸・さん・SUN・香り・夢づくり」計画を、多くの住民の声を聞きながら策定した。 まず、中心点に日本列島地図をかたどったモニュメントを建設した。この地で夢を語り合い、実現させる出発点として、そして全国にその夢が届けられるようにとの願いを込めて、「ゆめりあ34」(「夢エリア」と「三四」の組み合わせ)と名付けられた。 このモニュメントを中心に、参加者自らが体験することのできる多彩なイベントを盛り込んだ体験型ツアー「ゆめりあツアー」を企画、その第一回を今夏に実施した。また、特異点を持つ八つの自治体に呼びかけ、情報交換や交流も考えている。 水の丸地区には、ボランティア団体の協力でアジサイの植栽も進み、将来はアジサイの花と香りで全国の人びとをお迎えできるようにと、夢は大きく膨らんでいる。 夢をつくることによって出会い、安らぎ、感動が生まれ、人が息づく。他地域にない特異性のある地域づくりをめざして、日本列島中心点のあるわが町は、今まさに夢の実現に向けてのスタートラインに立ったばかりである。 (月刊地域づくり) =撮影日:2008年3月23日= 1.水の丸ふれあい公園 2.ここから,ゆめりあ 3. 4. 5.箸蔵駅にて 6. Nikon D3/ニコンAF‐S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED
by Shikoku-great1
| 2008-04-19 17:06
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